"性"について考える

翻訳に関わらせていただいた書籍『患者をエンパワーする慢性疾患セルフマネジメント』が出版されました。題名通り、患者さんのセルフマネジメントについて詳細が記載されていて、通読することで患者さんに伝えられることがグッと増えそうです。医療者以上に、慢性疾患をお持ちの方にお勧めの一冊です。


私が担当したのは、「セックスと親密さを楽しむ」という章です。この章の中の項立ては以下の通り。


セックスについての一般的な懸念、官能的なセックス、空想と官能、セックス中の症状を克服する、セックスの体位、セックスと親密さ:特別な考察

 

LGBTQについての文章は何度か書いたことがありますが、翻訳を含めセックスそのものについての文章を書いたのは初めてでした。身体に慢性的な痛みがあったり、手術後でパートナーに身体を見せるのに抵抗があったりする時に、セックスとどう向き合うかといったことが詳細に書かれており、翻訳しながら、とっても勉強になりました。完成した書籍が届き、自分が訳した章を早速パートナーの杏奈と一緒に読み合わせしました。とても勉強になったし、自分たちが何らかの疾患を患って悩んだ時には、再度一緒に読み合わせをしようと話をしました。

 

私は普段、「一般内科」の外来を担当していますが、内科疾患も性機能に影響することがあります。例えば、糖尿病の影響や薬の副作用で勃起障害が生じることもあります。それにも関わらず、私の外来ではこれまで性生活について患者さんと話をすることは決して多くはありませんでした。性のことで困った時に、かかりつけ医として相談しやすいと思ってもらえるような外来にしていきたいと思います。

 

話が少しずれますが、世界性の健康学会(World Association for Sexual Health)による「性の権利宣言」をご存知でしょうか。私はこの宣言を読んだ際に、自分自身に対してこのような価値観を身につけられていないと感じました。

 

例えば、3項目では「人は誰も、セクシュアリティと身体に関する事柄について自由に自己管理し、自己決定する権利を有する。」と書かれています。当たり前のことのように思えますが、同性をパートナーにもつことを真に肯定できたのは30歳頃になってからでした。自己決定する権利がある、なんて考えたこともありませんでした。

日本では、時に、「短いスカートと肌を露出するような恰好で歩いていたんだったら、自己防衛していないのだから、何をされても仕方ない」といったことを耳にすることがあります。このような発言は、どのような恰好をするかを選ぶのは自由であり、そのことに関わらず性の自己決定権は守られるべきであるという価値観が日本では育っていないことを反映しているのだと感じています。

 

少なくとも、私は日本で育ち、教育されてきた中で、真には性に関する自己決定権を身につけられていなかったように思います。そんな中で、大人になってから、オランダの性教育について書かれた下記の本を読んで衝撃を受けました。

 

例えば、オランダの学校で性教育に使われているカードを引いて答えていくゲーム。女の子用のカードの内容として、以下のようなものが書かれているそうです。

「ボーイフレンドと抱き合っていたら、ボーイフレンドが服の下に手を入れてきました。そこまではまだ許せないとどう伝えますか?実際に演じてみてください」

こんな実践的な性教育を受けたことはありません。でも、このようなシチュエーションの練習はとても有用だと思います。

また、この女の子用のカードでは”ボーイフレンド”がいることが前提にはなっていますが、6-9歳で恋愛の相手は異性とは限らないということも教えられるそうです。

本の学校教育で性について十分に学ぶ機会が提供されるようになるには、まだまだ時間が必要そうですが、今は自分で学べる様々なツールがあります。

例えば、「セイシル」というサイトは性の多様性についても丁寧に記載されています。

 

大人も子どもも、より豊かで自由で安全な性生活を送れるよう、楽しく学ぶ機会がもっと増えればいいなと思っています。

 

長くなりましたが、書籍『患者をエンパワーする慢性疾患セルフマネジメント』是非お手にとってみてください!

 

ピアちゃんは、今朝初めて外に行きたがってピーピーと泣きました。そして自分から階段を下りることができました。(これまでは階段を下りるのも、外に行くのも怖くて、ためらい時間が5分はありました。)庭に出たらすぐにおしっこをしたので、おしっこの合図もできるようになったのだと、とっても安心しました。

まつげも茶色で美人さん

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まつげも茶色いピアちゃん