人生を変えた出会い ~カウンセリングに7年通いました~

先日、パートナーの杏奈と、「人生を変えた出会いはあるか」という話で盛り上がりました。今に至るまで、この人がいないとヤバかったという恩人は何人もいるのですが、「人生変わったな~」という明確な実感があるのは、カウンセラーのN先生との出会いです。

 

今日は、うつ病を患った後、カウンセリングに7年間通った結果、自分が整った経過をシェアしたいと思います。

 

LGBTQの人々は、うつ病罹患率や死にたいという気持ちを抱くリスクが高いことが知られています。私も、小学生の時には既に死にたい気持ちがありました。その感情がセクシュアリティーに由来するものだったのか、家族関係に由来するものだったのかは分かりません。30歳頃にも、生きるということを修行のように感じていて、常に死にたい、人生を終えたいという気持ちがありました。

それが今は、杏奈と一緒に健康に長生きして、人生を楽しみたい!と思っています。

以前は、自分の死にたいという気持ちが消える日がくるなんて想像ができなかったので、不思議な感じです。もうリアルには、昔の苦しかった気持ちを思い出せなくなりました。

 

カウンセリングに通い出したきっかけは、うつ病を患った経験でした。ある日突然感情がコントロールできなくなり、動けなくなってしまったのです。家族関係のことも、キリスト教の信仰のことも、セクシュアリティのことも、忙しい仕事も、すべてが行き詰まりのように感じていました。

ほとんど頭が働かなかったのですが、ぼんやりと、これは薬を飲んで気分が回復すればOKということではないだろう。人生を整理しないと、どうにもならないところまできていると思いました。

ネットを使って、臨床心理士のカウンセリングも受けられる精神科を探して通院を始めました。初回の診察の時点で、「どうにもならない感じがあるので、カウンセリングも受けさせてください」と申し出ました。

そこで出会ったのが、N先生でした。

N先生に言われたのは、「あなたはワークホリックです。依存症は人間関係の病です。自分の価値を人に任せるのではなく、あなた自身に取り戻す必要があります。けれど、その道のりは、薄皮を一枚ずつめくっていくようなプロセスで時間がかかります」ということでした。

最初は何を言われているのかよく分からず、「早く回復して職場に戻りたい」とばかり訴えていました。働いていない自分には何の価値もないと思っていたのです。

様々な話をし、認知の歪みを修正する認知行動療法を受け、依存症に関するDVDを見たりプリントの読み合わせをしたりしました。

途中で、アダルトチルドレン自助グループにも行ってみましたが、セクシュアリティのことを話せず、真の自分を打ち明けるのが難しかったことから、自助グループには通わないことにしました。(最近はLGBTの人向けの自助グループもあるようです)

抗うつ薬は2~3年ほどで終了し、職場にも1年ほどで仕事量を軽減してもらって戻ることができました。カウンセリングは調子がとても悪かった時は毎週通い、調子がよくなってきたところで段々と頻度を減らし、最終的には2~3か月に1回程度の頻度で通いました。さぼったことは一度もありませんでした。それこそ、雪の日もあったし、台風の日もありました。何しろ、もう修行人生は続けたくなかったし、続けられないという強い気持ちがあり、絶対に回復するんだと食らいつくような気持ちで通っていました。

 

そして、7年が経過したある日「吉田さん、今日でカウンセリングは終了です。もう精神科には来ないようにね」と言われ、カウンセリングは終わりました。

N先生に、カウンセリングに通い出して、完治するまで一度もドロップアウトせずに通院する人はほとんどいないので、私は特殊ケースだと言われました。そして、「今だから言えるけど、吉田さんは色んな問題が絡み合っていて、最初に会ったときは私もどうしようかと思ったほど複雑だったのよ」と笑顔で言われました。

最初は、「薄皮を一枚ずつはがしていくようなプロセスで、価値を自分に取り戻す」という言葉の意味が全く分からなかったのですが、実際に今は、仕事をしていなくても、何かができる人間でなくても、人に必要とされなくても、自分が好きだし、このままでOKで、生きていてよいと思えるようになりました。

 

何が効果的だったのかと振り返ってみると、これが効いた!という単純なことではなく、毎日の生活の中で感じたことを話し、長年積み上げてきてしまった考え方や物の見方の歪みを修正していくという地道なプロセスだったように思います。家族や周囲の人との歴史や関係性についても自分の見方だけが真実ではないのだということも振り返りました。

今もまだ課題なのは、すぐ働き過ぎてしまうこと。仕事を入れすぎず、自分の人生を楽しんだり、心身を回復させる時間をしっかりとれるようスケジュール管理をしっかりと行うよう気を付けないといけません。

 

「医療者のためのLGBTQ講座」が出版された時、読んで欲しいと真っ先に頭に浮かんだのはN先生の顔でした。7年にわたって通ったカウンセリングは、既に終わっていたので、手紙を添えて本を郵送しました。

期待通り、返事は来ませんでした。

N先生に、カウンセリングという特殊な時間を、ルールを定めた時間の中で過ごすという枠組みが大切だということも教えてもらっていました。

N先生は、私のことを恐らく誰よりも知っていると思います。たぶん、私以上に。それでも、きっともう二度と会うことがない。だからこそ、N先生はプロだなぁと思うし、そんなプロのN先生に出会って自分を整えることができたから、私はLGBTQのことに向き合うことができるほどに回復できたのだと思っています。

返事は来なくても、N先生はきっと喜んでくれているだろうと思っています。

 

カウンセリングを受けていて、唯一にして最大の問題は、金銭的な負荷が大きいことだと思いました。決して安い値段ではなく、休職中に支払うのは結構なダメージでした。金銭的に余裕がなくても、カウンセリングにアクセスできる仕組みが必要だと思います。

 

長くなりましたが、危なかったあの時に、死なずに踏ん張ってよかったと今感じています。人はこんなにも変われるんだと自分を通して知ることができました。

生き延びた時間を使って、LGBTQの人が死にたいと思う必要なんてない社会作りをしていきたいと思っています。

 

同じポーズのミケ子とピア